『海月姫』の世界観を成立させる最大の障壁は、世間一般の美意識から逃走したオタク女子集団「尼〜ず」を、いかにコントに堕とさず愛すべき人間として具現化できるかという点にありました。ドラマ版のキャスティングは、この難題に対して驚くべき完成度で応えています。
枯れ専のジジ様を演じた木南晴夏は、抑えた声のトーンと猫背の姿勢で枯淡な佇まいを完璧に再現。鉄道オタクのばんばさんを演じた松井玲奈は、アフロヘアに身を包みながらも早口の鉄道トリビアを滑らかにまくし立て、元アイドルという先入観を完全に粉砕しました。さらに、三国志オタクのまややを演じた内田理央は、常に前髪で視界を塞ぎ、奇妙な身振り手振りと甲高い雄叫びをあげる難役を熱演。モデルとしての美貌を完全に封印したその怪演は、視聴者や原作ファンから「完全に原作から飛び出してきた」と惜しみない賛辞を浴びました。
特筆すべきは、彼女たちが単なる色モノとして消費されるのではなく、それぞれの「偏愛」がクラゲドレスの制作において欠かせない職能(着物の知識、精密な縫製技術、素材調達の交渉力)へと昇華されていくカタルシスです。自分の殻に閉じこもっていた女性たちが、自らの偏愛を武器に外の世界と交渉し始める姿は、多くの女性視聴者の深い共感を呼び起こしました。