つんく♂のがん闘病と声帯摘出の決断には、一体どのような真相があったのか。絶望の淵に立たされた彼を「生きる道」へと踏み切らせた決定的な要因は、妻である加奈子夫人の一言と、まだ幼かった3人の子どもたちの存在だった。
再発を宣告された夜、声を失う恐怖に打ち震え、手術を躊躇するつんく♂氏に対し、妻は迷いのない眼差しで語りかけたという。「生きてくれたら、それでええやん。歌われへんようになっても、子どもたちの父親でいてくれたら、それだけで十分やから」。
その言葉が、表現者としての強固なエゴに囚われていた彼の心を解き放った。「自分は歌手である前に、家族を守る一人の父親であり夫である」という原点への立ち返りである。2014年10月下旬、つんく♂氏は喉頭全摘出手術を受け、声を司る器官と永遠に決別した。
術後、麻酔から覚めた彼が病室のベッドで実感したのは、首元にぽっかりと空いた「永久気管孔」の冷たい風と、声を出そうとしても喉の奥から空気が漏れるだけの無力感だった。しかし、筆談ノートに震える手で最初に走らせた文字は、そばに付き添う家族への感謝の言葉だったと伝えられている。