ドラマの骨格を支えるカーネーションあらすじは、実在のファッションデザイナーである小篠綾子の自伝『やんちゃくれ』に記された実話を巧みに昇華したものです。大正時代、男尊女卑の風潮が色濃く残る岸和田だんじり祭の城下町で、女子でありながら男衆に混ざって屋根によじ登ろうとした破天荒な少女が、やがて洋裁という未知の技術に命を懸けていきます。
21歳で自らの洋裁店「コシノ洋装店」を開業し、夫の戦死という悲劇に見舞われながらも、女手一つで店を守り抜いた小篠綾子。劇中では優子、直子、聡子として描かれるコシノ三姉妹(コシノヒロコ、コシノジュンコ、コシノミチコ)を育て上げる過程は、生易しい母娘ドラマの枠組みを完全に超越していました。母の背中を追い、やがて母を乗り越えようと牙を剥く娘たちと、デザイナーとしてのプライドを激突させる母親の姿は、血の通ったライバル関係そのものです。
当時の特番インタビューにおいて、実際のコシノ三姉妹は「お母ちゃんは聖母なんかやない。いつも怒鳴り散らしとったし、家庭より仕事が最優先の人やった。でも、その働く背中が何よりも格好良かった」と述懐しています。ドラマはこの赤裸々な手記の精神をそのまま受け継ぎ、清濁併せ呑む母親の壮大な生き様を克明に描き出しました。