豚バラブロック肉を加熱すると、60℃付近からタンパク質(アクチン・ミオシン)の収縮が始まり、内部の水分が外へ絞り出されます。この段階で止まると肉はパサパサで固い状態になります。しかし、煮込み温度が85℃以上に達し、一定時間維持されると、肉の繊維を束ねている硬い結合組織「コラーゲン」が分解され、ゼラチンへと変性します。これが「箸で切れる柔らかさ」の正体です。
通常の鍋ではこのゼラチン化に2〜3時間を要しますが、内部を約1.8〜2気圧(115〜120℃)まで高められる圧力鍋を使えば、わずか15〜20分の加圧でコラーゲンの分解を急速に促進できます。
それにもかかわらず「圧力鍋を使ったのに肉が柔らかくならない」という失敗が起きる理由は、主に以下の3点に集約されます。
- 浸透圧による脱水:最初から醤油や砂糖を入れた煮汁で加圧すると、強い浸透圧によって肉内部の水分が強制的に引き出され、繊維が締まってゴムのように硬化します。
- 下茹での脂抜き不足:余分な脂とアクが抜けきらないと、熱伝導が阻害され、脂っこさだけが残る仕上がりになります。
- 急激な減圧:ピンが下がる前に無理やりノズルを回して減圧すると、肉内部の水分が突沸して抜け、パサつきの原因になります。