おきゅうとは、福岡県福岡市を中心に古くから愛され続けている伝統的な海藻加工食品です。かつては早朝に「おきゅうと〜、おきゅうと〜」と独特の売り声を響かせる行商人が博多の街を歩き回り、炊きたてのご飯と味噌汁に並ぶ博多の朝食の顔として定着していました。
その歴史は江戸時代中期の享保年間にまで遡ります。江戸中期の学者・貝原益軒が記した『筑前国続風土記』などにも海藻を加工した食文化の記述が見られます。一説には、天明の大飢饉の際に博多の商人・笠屋某(あるいは沖の石屋)が、海岸に打ち上げられた海藻を煮詰めて固める製法を考案し、多くの人々の命を救ったことから「救人(きゅうと)」と名付けられたとも伝えられています。
主原料となるのは、日本海の荒波で育つ紅藻類のエゴノリ(エゴ草)です。これに「イギス」と呼ばれる別の海藻を絶妙な比率で配合し、水洗いや天日干しを繰り返した後に大釜で煮溶かし、小判型や渦巻き状の型に流し込んで冷やし固めます。エゴノリの持つ天然の粘性と磯の風味が凝縮された、職人技の結晶です。