『テルーの唄』の根底に流れる切なさと透明感の背景には、日本近代詩の巨人・萩原朔太郎の存在があります。作詞を担当した宮崎吾朗監督は、作劇の過程でキャラクターの心情を整理するにあたり、朔太郎の代表的な詩『こころ』から強いインスピレーションを受けました。
『こころ』にある「こころを何にたとへよう」という問いかけや、風のなかを飛んでいく鳥、雨に打たれる花といった情景描写の数々。宮崎監督はそれらのエッセンスを昇華させ、「鷹」「花」「鳥」という自然のモチーフを用いて、誰にも心を開けないテルーの孤独と憧れを歌詞として描き出しました。
この詞にメロディを宿らせたのが、独自の世界観で知られる谷山浩子です。手渡された歌詞の断片を見た谷山は、わずかな時間でその哀しくも美しい旋律を書き上げたと伝えられています。シンプルでありながら一度聴いたら忘れられないフォークソングのような素朴さは、作為のない純粋な感情の結晶といえます。