人が発声するとき、喉頭にある左右一対の「声帯」が呼気によって毎秒100〜300回以上高速で振動します。正常な声帯は滑らかな粘膜で覆われ、隙間なく綺麗に合わさることで澄んだ音波を生み出します。しかし、何らかの理由で声帯の均一な振動が阻害されると、声に濁りや雑音が発生します。これが声帯枯れ声メカニズムの基本原理です。
ダミ声特有の太い濁り音が発生する大きな要因として、声帯のすぐ上部に位置する「仮声帯(前庭ヒダ)」の関与が挙げられます。本来、仮声帯は発声用ではなく気道を保護するための組織ですが、喉に過度な力みがかかったり特定の呼吸圧が加わったりすると、仮声帯が声帯と同時に振動します。この二重振動こそが、激しい歪み(ディストーション)を帯びた濁り声を作り出します。
一方、病的な要因によるしゃがれ声の理由としては、以下の3点が臨床現場で頻繁に確認されています。
- 声帯粘膜の器質的変化:大声の出しすぎや慢性的な酷使により、声帯に「声帯結節」や「声帯ポリープ」と呼ばれるタコやコブができる現象。
- 化学的刺激による慢性炎症:タバコの煙に含まれる有害物質や高濃度アルコールによる粘膜の脱水と慢性的な浮腫(いわゆる声帯浮腫)。
- 胃酸逆流による喉頭炎:就寝中などに胃酸が食道を逆流し、声帯後部を焼く「胃食道逆流症(GERD / LPRD)」。朝起きた瞬間に声がガラガラになる主因とされます。