治水インフラが刷新されたとはいえ、豪雨時の現場感覚はどうなのでしょうか。武蔵小杉駅周辺を日常的に利用する通勤者や地元住民の証言、近年の大雨時における実際の状況を検証すると、街の「リアルな現在地」が浮かび上がってきます。
武蔵小杉駅は、JR南武線、横須賀線・湘南新宿ライン、相鉄直通線、東急東横線・目黒線が乗り入れる巨大結節点です。このうち、2019年に激しい冠水に見舞われたのはJR横須賀線の新南改札周辺でした。このエリアはもともと工場跡地を再開発した経緯があり、駅の北側や西側に比べてわずかにすり鉢状の地形をしています。
近年の大雨警戒時における現地観察や住民コミュニティの報告によると、道路の側溝から水が溢れそうになる場面はあっても、2019年のように濁流が数日間にわたって引かないといった光景は見られなくなっています。SNSや地域掲示板に投稿されるリアルな声を見ても、街の変化が窺えます。
「以前は少し強い雨が降るだけで横須賀線改札が浸水するのではないかと不安だったが、排水溝の改良とポンプ配備が進んでからは路面冠水が引くスピードが格段に早くなった」(地元在住40代会社員)
「台風接近時の横須賀線の遅延や運休は、駅周辺の浸水というよりは、強風による飛来物や多摩川橋梁付近の風速規制、東海道線や湘南新宿ラインの広域直通運転見合わせに起因するものが大半」(毎日の通勤利用者)
大雨時のリアルタイム情報を把握する手段も確立されました。現在では川崎市防災ポータルや、国土交通省京浜河川事務所が公開する多摩川河川監視カメラ(丸子橋・等々力周辺)、自治体の雨量降雨レーダーをスマートフォンで誰でも即座に確認できます。行政・住民双方が「水位データをリアルタイムで監視しながら先回りして行動する」という防災リテラシーを獲得したことこそが、現場における最大の防護壁となっています。