酸性とアルカリ性を混ぜた際に生じる最も重大なリスクが、塩素ガス発生事故である。単なる中和反応で終わらない危険な組み合わせの筆頭が、「酸性タイプのカビ取り剤・クエン酸」と「次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤」の混用だ。
塩素系漂白剤はアルカリ性で安定を保っているが、ここに酸性物質が加わると平衡状態が崩れ、強烈な毒性を持つ黄緑色の塩素ガスが一気に遊離する。この気体を吸引すると、肺胞の水分のなかで酸が再形成され、激しい咳嗽、呼吸困難、最悪の場合は急性肺水腫を引き起こして死に至る。2026年現在も、密閉された浴室や厨房での不注意による事故報告は絶えない。中和による安全化どころか、致死性の化学物質を自ら発生させてしまう大惨事になり得るのだ。