清水尋也という俳優のキャリアを振り返る上で、映画『ミスミソウ』は決定的なマイルストーンとして位置づけられます。2014年の中島哲也監督作『渇き。』で凄惨ないじめを受けるボロボロの中学生役を演じて業界に衝撃を与え、2015年の『ソロモンの偽証』では逆に圧倒的な威圧感を放つ不良少年・大出俊介役を熱演。弱者と強者、被害者と加害者の双方を極限の解像度で演じ分ける才能は、早くから映画ファンや映画監督たちの注目の的でした。
そして2018年、映画初主演を飾った山田杏奈との運命的な共演となった『ミスミソウ』において、清水尋也はその二面性をひとつの役の中で融合させるという離れ業を成し遂げました。可憐な少女から全身血塗れの復讐鬼へと変貌していく山田杏奈の研ぎ澄まされた刃のような演技に対し、清水尋也は底の知れない沼のような不気味さで対峙。同世代の若手俳優同士による剥き出しの魂のぶつかり合いは、日本映画界に類を見ない緊張感を生み出しました。
清水尋也はその後、2021年の大ヒット映画『東京リベンジャーズ』の半間修二役で見せた飄々とした狂気、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』での繊細で不器用な青年・内田一馬役、さらには数々の先鋭的なドラマやインディペンデント映画に至るまで、多面的なフィルモグラフィーを築き上げています。2026年現在の成熟した名バイプレイヤー、そして主演俳優としての地位の礎には、この『ミスミソウ』で魅せた「観客の心を抉るような美しい狂気」の演技が存在していたことは間違いありません。