庭園の奥へと進むと、突如として視界に飛び込んでくるのが、巨大な天然石「獅子岩」だ。人工的に削り出されたものではなく、大地が長い年月をかけて生み出した奇岩のフォルムは、どこからどう見ても咆哮する獅子の横顔に見える。
岩の表面には年月輪を物語る地衣類が張り付き、苔がその輪郭を柔らかく縁取っている。ガイドブックを片手に「本当に獅子に見えるか」を探すのも一興だが、しばらくその場に佇んでいると、岩そのものが呼吸しているかのような錯覚に陥るから不思議だ。大地から隆起した巨石と、繊細に手入れされたモミジの枝ぶりが生み出すコントラスト。自然の粗野さと人の手による美意識が危うい均衡でせめぎ合うこの場所には、禅寺ならではの張り詰めた緊張感が漂っている。