一般的な感覚からすれば、巨額の不正を暴き銀行を救った英雄には相応のポストが与えられるべきです。しかし、銀行という極めて特殊なヒエラルキー組織において、半沢の行動は「危険すぎる劇薬」と判定されました。
銀行の人事評価は基本的に「加点方式」ではなく「減点方式」で動きます。半沢が挙げた成果は計り知れないものの、上司への公然たる反逆、頭取の指示を無視した私的な復讐劇、そして役員会という最高意思決定機関の場を混乱させた行為は、銀行の規律を根本から破壊する重大な違反でした。
もし半沢を本店に残し、そのまま役員昇進や要職への栄転を認めれば、「結果さえ出せば上司を力でねじ伏せてもいい」という前例を行内に作ることになります。組織統制を最優先するメガバンクにおいて、制御不能なスタンドプレーを放置することは許されず、半沢の役員昇進見送りと出向は組織人として避けられない帰結でした。