この店の真骨頂は、素材に対する圧倒的なリスペクトにある。鹿児島県枕崎や山川、静岡県焼津など、長松氏が直接現地へ赴き、自らの目と舌で確かめた鰹節しか扱わない。
誰が、どのような想いで、どんな薪を使って燻し上げたのか。生産者一人ひとりの顔とストーリーを熟知しているからこそ、削り方ひとつにも迷いがない。生産者の高齢化や後継者不足が叫ばれる伝統産業の現場において、彼女の存在は単なる買い手を超えた「伝道師」として機能している。一本の鰹節の背後にある風土と人間の営みが、一杯のご飯を通じてダイレクトに食べ手に伝わってくる。