国際社会において最も厳しい眼差しを向けているのが欧州食品安全機関(EFSA)である。EFSAはPAHsの中でも特に毒性が強いとされるベンゾピレンを中心とした特定物質に対し、厳格な許容基準値を設定した。これにより、日本の伝統的な燻煙製法で作られた鰹節の多くが、基準値を超えるリスクがあると判断されたのである。
この厳しい基準が引き金となり、厳格なEU輸入規制が発動された。かつて日本から欧州へ向けた伝統的鰹節の直輸出品は、税関の壁を越えられない事態に追い込まれた。EU側は「加熱調味加工品であっても、消費者の長期的な健康被害を防ぐためにはいかなる例外も認めない」という予防原則の姿勢を崩さない。ヨーロッパの高級日本料理店で、現地の水産物から削り節を自作せざるを得ない時期が続いたのは、この規制の壁があまりにも高かったからだ。