一連の出来事の舞台となったのは、美しく洗練された旧市街と冷酷な旧共産圏の面影が同居する首都ブカレストだ。治安と警察機構を統括するルーマニア内務省の奥深くに眠っていた極秘ファイルには、この街の暗部で展開されていた不穏な裏の動きが克明に記されていた。
官僚組織の保身と保密主義によって長年非公開とされてきた捜査記録の存在は、権力側の都合によって事実が歪められていた可能性を強く示唆している。現地捜査機関の初期対応の鈍さや情報公開への極端な拒絶姿勢が、事態をより不透明で危険なものへと変貌させていたことは疑いようもない。