バリネコの由来と歴史を紐解くと、古くからの宗教的儀礼と20世紀後半の観光文化の発展という、興味深い二重構造が見えてきます。
バリ島には古くから「アニミズム(精霊信仰)」と「バリ・ヒンドゥー教」が融合した独自の信仰体系があり、木や石、あらゆる動物に神聖な精霊(プトゥラ)が宿ると信じられてきました。特にウブド近郊にあるマス村(Mas)は、王族の寺院彫刻や神聖な仮面(トペング)を手掛ける最高峰の彫刻師が集まる「木彫りの聖地」として知られています。
しかし、現在私たちが目にする愛らしい猫の置物は、太古から神殿に祀られていたわけではありません。1980年代から1990年代にかけてバリ島が世界的なリゾート地として発展する過程で、マス村や近隣の工房の職人たちが、伝統的な彫刻技術を活かして観光客向けのバリ島のお土産として開発したハンドメイド工芸品が直接のルーツです。
バリ島の人々にとって猫は、農作物を荒らすネズミを捕獲し、家屋を守る「頼もしい共生者」であり、幸運を招く存在でした。職人たちの卓越した技術と、島民の猫に対する親愛の情が結びついたことで、世界中で愛されるバリ猫木彫りが誕生しました。