日本でも大きな話題となった「素手で日本兵を二つに引き裂く」「手榴弾を空中に投げて戦闘機を撃ち落とす」「空中でバイクを乗り回しながらライフルを連射する」といった荒唐無稽な描写は、中国現地で「抗日神劇(コウニチシンゲキ)」と呼ばれています。
こうした極端な描写が生まれた直接の原因は、供給過多に陥った抗日ドラマ枠の中での熾烈な視聴率争いです。年間数十本から百本近い同類ドラマが乱立するなか、他作品と差別化を図るために制作陣が目をつけたのが「中国伝統の武侠(カンフーアクション)映画の要素」や「ハリウッド的なヒーロー演出」の無節操な合成でした。
正統派の歴史劇を作るには綿密な時代考証や高額な美術セットが必要ですが、荒唐無稽なアクション重視の作品であれば、浙江省の巨大撮影所「横店影視城」などで安価かつ短期間に量産できます。地方局の昼や深夜の埋め草番組として一定の需要があったことも、こうした過激化に拍車をかけました。
しかし、こうした常軌を逸した描写に対しては、中国国内の視聴者からも「歴史への冒涜」「知能指数を疑う」と猛烈な批判が噴出しました。事態を重く見た広電総局は通達を出し、「歴史の娯楽化・過度な武侠化」を明確に禁止する規制を発動しました。審査基準が大幅に厳格化されたことで、現在ではこうした露骨なトンデモ描写を含む作品は市場からほぼ一掃されています。