年の瀬が近づくと、街の至るところで見かける鏡餅・正月飾り。その頂点に誇らしげに鎮座する果実こそ、ダイダイ(Citrus aurantium)である。なぜ温州みかんではなく、わざわざ苦味の強いダイダイが選ばれてきたのか。その理由は、この植物が持つ極めて特異な生態にある。
一般的な柑橘類は熟すと自然に枝から落下するが、ダイダイは冬を越えても木から落ちない。それどころか、翌年の夏になると再び緑色を帯び、そのまま2年も3年も枝に留まり続ける。古い実と新しい実が同じ木に共存する姿――これこそが「代々の実が同じ枝に連なる=代々(だいだい)」と呼ばれる所以だ。
家系が絶えることなく、子孫繁栄が永遠に続くように。武家社会において重んじられたこの強烈な縁起担ぎは、やがて庶民の生活文化へと定着していった。単なる言葉遊びではない。生命の逞しさをそのまま吉祥の象徴へと昇華させた、先人たちの観察眼がそこにある。