中村米吉の人間性と芸の土台を築き上げたのは、温厚かつ芸に厳格な父・五代目中村歌六と、献身的な家族の存在です。
2023年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に各個認定された父・歌六は、派手な主役争いとは一線を画し、どんな端役や脇役であっても舞台全体に深みを与える名バイプレイヤーとして歌舞伎界全体から絶大な敬意を集めています。取材現場において米吉は、父について「父の舞台に対する誠実さ、どんな小さな役にも血を通わせる姿勢こそが私の教科書」と語っています。父が立役のいぶし銀として芸を極める姿を背中で見続けてきたことが、米吉の女方としての丁寧な役作りへと直結しています。
4歳年下の弟・中村龍之助との兄弟仲の良さも関係者の間では有名です。立役を志す龍之助に対し、米吉は兄として稽古の助言を与えつつも、舞台上では一人の役者として対等に向き合っています。過去の対談番組やインタビューでも、米吉がユーモアを交えて弟をいじり、龍之助が照れながら信頼を寄せる姿が幾度となく報じられており、梨園特有の過酷な競争環境の中でも健全な兄弟愛が保たれています。
そして、小川家を陰で支える母親・小川恵津子さんの手腕も特筆に値します。梨園の妻として、人間国宝である夫・歌六の健康管理から、若手花形として多忙を極める米吉・龍之助兄弟のサポート、後援会への気配りまで完璧にこなす「女将」としての存在感は絶大です。米吉の明るく社交的な性格や、周囲に対する細やかな気配りは、母の背中を見て育った賜物であると関係者は口を揃えます。