平成3年5月場所は、大相撲の歴史が静かに、そして激しく動いた場所だった。初日、若干18歳の貴花田との一番。昭和を象徴する大横綱が、新時代の申し子に一気に寄り切られた瞬間、館内には地鳴りのような歓声と悲鳴が交錯した。ウルフの手が土俵につき、世代交代の足音がはっきりと響き渡った瞬間である。
決定打となったのは3日目の対貴闘力忠茂戦だ。立ち合いで激しく当たったものの、いつものような鋭い巻き替えや攻め込みが見られず、あっけなく土俵外へと押し出された。花道を引き揚げる千代の富士の表情には、すでに決意の影が差していたという。若い世代の台頭を受け止めつつ、自らの肉体がイメージ通りに動かない現実を静かに受け入れた夜、彼は回しを置く決意を固めたのである。