はたしょう二氏の手腕が際立つもう一つの要素が、劇伴(BGM)と音響効果(SE)の絶妙なバランス感覚です。多くのアニメ作品では、シーンを盛り上げるためにドラマチックな劇伴を大音量で流し続けがちですが、はた氏の演出はしばしば「引き算の美学」と評されます。
最も緊張感が高まる決定的な瞬間において、あえて劇伴を完全にカットし、キャラクターの衣擦れの音や浅い呼吸音、風の音だけを残す大胆な「無音の演出」を採用します。この静寂の配置によって、視聴者は登場人物の極限の心理状態へと一気に引きずり込まれます。
また、バトルシーンにおける打撃音や破壊音においても、単に低音を強調して派手にするのではなく、空間の広さや材質の違いを想起させるリアルな音響効果を選定します。セリフの明瞭度(台詞の聞き取りやすさ)を決して犠牲にせず、劇伴と効果音がお互いの帯域を邪魔しないよう精緻に整音されたトラックは、まさに音の職人によるマスターピースと言えます。