咳に関する家庭療法やネット上の情報には、医学的に見て逆効果になりかねない誤解が少なくありません。
典型的な誤解が「加湿器をガンガンにかければ咳は治る」という盲信です。確かに湿度は気道粘膜の保護に不可欠ですが、過度な加湿(湿度60%以上)は室内のカビやハウスダスト・ダニの繁殖を爆発的に促進させます。咳喘息やアレルギー素因を持つ患者にとって、カビの胞子やダニの死骸は強力なアレルゲンとなり、かえって気道炎症を悪化させる引き金になります。適切な湿度は50%〜60%未満にコントロールするのが鉄則です。
また、「痰を無理に止める」行為も極めて危険です。湿性咳嗽における痰は、気道内の病原体や異物を体外へ排出するための生体防御反応です。市販の強力な鎮咳薬で無理やり咳を止めると、細菌に汚染された分泌物が気管支や肺胞内に滞留し、重篤な細菌性肺炎を引き起こすリスクが高まります。