近年の治療アプローチは、過去数十年の常識を覆した。従来の内科的治療は、プロスタサイクリン誘導体、エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬などを用いた「血管拡張」が主軸だった。狭くなった血管を薬力学的に押し広げ、心臓の負担を一時的に減らす対症療法にとどまっていたのだ。
潮流を決定的に変えたのが、血管壁の過剰な細胞増殖そのものを抑え込むアクチビンシグナル阻害薬をはじめとする新世代の分子標的治療薬だ。血管の不可逆的なリモデリング(線維化や肥厚)を巻き戻す「逆リモデリング」をターゲットにした治療薬が臨床現場に定着したことで、病勢の進行を食い止めるだけでなく、肺血管の構造自体を改善させる道が開けた。多剤併用療法との組み合わせにより、かつては生存率が極めて低かった重症例でも、長期的な病態コントロールが現実のものとなっている。