「ティッシュに鮮血が付着する」「鼻をかんだ後にこめかみや額がズキズキ痛む」という症状も、無理な鼻かみがもたらす典型的な生体トラブルです。鼻出血の約80〜90%は、小鼻の内側、鼻中隔(左右の鼻を隔てる壁)の前方にある「キーゼルバッハ部位」からの出血が占めています。この部分は極めて薄い粘膜の直下に毛細血管が網の目のように密集しており、わずかな摩擦や急激な血流圧の変動で破綻しやすい脆い構造を持っています。
強く鼻をかむと、鼻腔内に瞬間的な陽圧と陰圧が急激にかかり、乾燥して炎症を起こした毛細血管が耐え切れずに断裂します。一度出血した部位はかさぶたを形成して修復を図りますが、再び強圧でかむことでかさぶたが剥がれ落ち、慢性的な反復出血へ移行する悪循環に陥るケースが多発しています。
一方、鼻をかむ動作に伴う頭痛には2つの病理メカニズムが存在します。1つは、鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)の換気ルートである自然口が炎症で塞がれている状態で鼻をかむことにより、副鼻腔内の気圧が乱れ、三叉神経を介して放散痛が走る現象です。もう1つは、すでに膿が溜まった「副鼻腔炎(蓄膿症)」のサインです。黄色や緑色の粘り気のある鼻汁、額や頬の重圧感、下を向いたときに増悪する頭痛がある場合、単なる鼻風邪ではなく副鼻腔粘膜の重い細菌感染を疑う必要があります。