『天体観測』のリアルな質感は、藤原基央自身の幼少期から少年時代の原体験に深く根ざしています。メンバー4人(藤原基央、増川弘明、直井由文、升秀夫)は全員が千葉県佐倉市臼井の出身であり、幼稚園から小・中学校を共に過ごした幼なじみです。
歌詞に登場する「午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった」という情景描写には、メンバーたちが育った京成電鉄沿線の踏切や、夜の住宅街の空気感が濃密に投影されています。藤原が当時のインタビューで語ったところによれば、子供の頃に理科の授業や個人的な好奇心から星空を見上げた記憶、そして仲間たちと夜間に忍び足で出歩いたときの張り詰めた高揚感が、作詞のインスピレーションの源泉となりました。
天体観測という行為自体、本来は静寂の中で行われる孤独な作業です。それをバンドサウンドの疾走感とぶつけることによって、私的なノスタルジーを普遍的なアンセムへと昇華させる離れ業をやってのけました。派手な虚飾を排し、身の回りの手触りがある情景から宇宙的なスケールへと接続する作風は、この時期にすでに完成の域に達していたことが窺えます。