「フィギュアスケートはお金持ちのスポーツ」という世間のイメージは、結論から言えば紛れもない事実です。サッカーや野球のように公共のグラウンドや体育館で練習できる球技とは異なり、フィギュアスケートは「人工的に氷を張り続け、莫大な電気代を消費する専用施設」が不可欠だからです。
フィギュアスケートはお金がかかると言われる根本原因は、単一の出費ではなく、あらゆる工程で発生する「高額な専門費用」が多重に積み重なるシステムにあります。その驚くべき内訳の柱となるのが以下の要素です。
1. リンク代(一般滑走料と貸切料)
一般営業時間内のリンク滑走料は1回あたり1,500円〜2,500円程度ですが、混雑したリンクでジャンプやスピンの本格練習を行うのは衝突事故の危険が伴います。そのため、選手たちは早朝(午前5時〜7時)や深夜(午後9時〜11時過ぎ)にリンクを貸し切って練習します。このリンク貸切代は1時間あたり3万〜6万円が相場で、所属クラブの生徒たちで頭割りしても1回につき数千円、月間ではリンク代だけで5万〜10万円が消えていきます。
2. 指導料(個人レッスン代とリンクサイドフィー)
集団レッスンを抜けて本格的な競技選手になると、専任コーチによる1対1の個人レッスンが必須となります。指導料は「1コマ(30分または45分)あたり3,000円〜10,000円程度」が基本。さらに見落とされがちなのが、大会や遠征時にコーチが帯同する際の日当、交通費、宿泊費を選手側が全額負担する「リンクサイドフィー(帯同費)」です。遠征が重なるシーズンには、指導関連費だけで月数十万円が吹き飛びます。
3. フィギュアスケート靴の値段とブレードの消耗
足元を支えるスケート靴は、一般的なレジャー用とは構造が全く異なります。トップ選手の体重とジャンプ着氷時の強い衝撃(体重の5〜8倍)に耐えうる硬度を持つ専用ブーツは、靴本体(革靴)だけで8万〜15万円、氷を捉えるブレード(刃)だけで7万〜12万円。合計すると1足あたり15万〜25万円以上が相場です。しかも足の成長期にあるジュニア選手や、毎日のようにトリプル・クワドジャンプを着氷する選手の場合、靴の革が数ヶ月から半年で折れてヘタってしまうため、年に2〜3足買い替えるケースも珍しくありません。
4. 衣装代相場とプログラム振付料
フィギュアスケートは「氷上の芸術」と称される採点競技であり、プログラムの世界観を表現する衣装と振付は審判の演技構成点(PCS)を左右する重要な競技要素です。激しい動きでも破れず、軽量で何千個ものスワロフスキーやビーズが手縫いされた特注衣装は、1着あたり15万〜30万円前後が相場。ショートプログラム用、フリースケーティング用、エキシビション用、さらに万が一の予備を含めると、1シーズンで衣装代だけで60万〜100万円に達します。また、世界的な有名振付師に依頼する振付料は1曲あたり50万〜150万円に上り、これに振付師の渡航費や滞在費が上乗せされます。