ネット上には「刺されてすぐに吸い出したら腫れなかった」という体験談が散見されます。しかし、皮膚科学および感染症学のメカニズムに照らし合わせると、ポイズンリムーバー蚊の効果の真相は極めて限定的、あるいはプラセボ効果の域を出ないというのが医学界の一致した見解です。
蚊にポイズンリムーバーは意味ない理由の核心は、蚊が吸血する際の生体メカニズムにあります。蚊は皮膚を刺した瞬間、血液の凝固を防ぐために抗凝固作用や麻酔作用を持つ「唾液腺物質(タンパク質)」を注入します。この唾液は刺入された直後、毛細血管内および細胞外基質へと瞬時に浸透・拡散します。注入される唾液の量はわずか数ナノリットル(1マイクロリットルの1000分の1以下)という極微量です。
ポイズンリムーバーが強力な陰圧(シリンダー内の気圧低下)をかけたとしても、すでに周囲組織や血管網へと拡散・結合したタンパク質分子を皮膚の外へ引き戻すことは物理的に困難です。吸引器を使用した際に出てくる透明な液滴は、蚊の唾液毒素ではなく、陰圧によって毛細血管から滲み出た血漿成分や細胞間隙の組織液(間質液)に過ぎません。
すなわち、蚊の唾液毒素吸引と痒み抑制を期待して器具を用いても、痒みのトリガーとなるヒスタミン放出プロセスを物理的に遮断することは構造上不可能なのです。