山形県鶴岡市が世界に誇る食のポテンシャルは、単なる和食や伝統料理の枠組みにとどまらない。イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフをはじめとする先駆者たちが提唱してきた「庄内ガストロノミープロジェクト」の精神は、いまや地元のパン職人たちの血肉となり、ベーカリーシーンに劇的な変革をもたらしている。
ユネスコ食文化創造都市推進協議会を中心に地域全体で推進される地産地消の取り組みは、小麦や酵母、水、そして合わせる具材の一つひとつにまで及ぶ。庄内平野で採れる新鮮な野菜や旬の果物、さらには地元の醸造所から分けてもらう酒粕を使った発酵パンなど、この土地でしか生み出せない唯一無二のフレーバーが次々と誕生している。職人たちの手によって、鶴岡の風土そのものが香ばしい一酵一酵に昇華されている。