中止判断 誰ができるのかという問いに対する法的な回答は、極めて残酷かつ明確です。大会を中止できる権利は、東京都でも日本政府でもなく、IOC バッハ会長 権限をはじめとするIOC側にのみ独占されていました。これは招致決定時に締結された「開催都市契約(Host City Contract)」に刻まれた鉄の掟です。
開催都市契約の第66条には、大会の中止事由として「戦争、内乱、ボイコット、あるいは参加者の安全が著しく脅かされる事態」などが規定されていますが、その発動権限を持つのはIOC単独と定められています。もし日本側(東京都や日本オリンピック委員会=JOC)が世論を理由に自ら開催を返上した場合、それは明確な「契約不履行」とみなされます。
仮に日本側が一方的な中止を通告した場合、IOCが被る損害、とりわけ世界各国の放送局に対する放映権の補償やトップパートナー企業への協賛金返還義務など、生じるすべての損害賠償 責任問題が日本側に請求される法的リスクを抱えていました。その額は少なくとも数千億円、場合によっては1兆円規模に膨らみかねないとの法務分析が水面下で共有されていたのです。財政的にも国際信用的にも、日本側から「やめます」と告げる選択肢は事実上封じられていました。