瀬戸内海国立公園の一角を占める柳井の歩みは、中世以降の港町としての発展から始まります。室津半島の西側に位置し、風待ち・潮待ちの良港として栄えた柳井津は、江戸時代に入ると吉川氏が治める岩国藩の御納戸(おなんど)と呼ばれ、瀬戸内屈指の商業都市として繁栄を極めました。現在、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている「白壁の町並み」は、その商都の記憶を今に伝える生きた遺産です。
約200メートルにわたる本町通りには、妻入りの重厚な商家、白漆喰の土塀、格子窓が連なり、足を踏み入れるだけで時が止まったかのような錯覚を覚えます。この地で生まれた特産品が、仕込み水のかわりに生醤油を使って二度仕込む「甘露醤油」です。天明年間(18世紀末)に高田三四郎が創始したと伝わり、当時の岩国藩主から「甘露、甘露」と称賛されたことから名づけられたこの調味料は、現在も「佐川醤油蔵」などの老舗で昔ながらの木桶仕込みが守られています。刺身や寿司の味を引き立てる芳醇な香りととろみは、全国の食通を唸らせる柳井グルメの象徴といえます。
そして、夏の柳井を語る上で欠かせないのが「柳井市 金魚ちょうちん祭り」です。幕末の頃、柳井の商人・熊野屋正助が青森の「ねぶた」に着想を得て、伝統織物「柳井縞」の染料を用いて創り出したとされる郷土民芸品がルーツとなっています。赤と黒の鮮やかな彩色、大きな丸い目がユーモラスな金魚ちょうちんは、8月の本祭を迎えると白壁の町並み一帯に数千個規模で掲揚され、夜間には幻想的な灯火が街道を染め上げます。さらに、ダイナミックに練り歩く「金魚ねぶた」の熱気は、静かな古都に強烈な躍動感をもたらしています。
2026年最新イベント情報に目を向けると、山口県全体のデスティネーションキャンペーンや地域食文化を押し出した「やないーもフェア2026」など、伝統行事と連動した体験型ツーリズムが本格化しています。単に見物するだけでなく、蔵元での醤油絞り体験や金魚ちょうちんの絵付けワークショップなど、旅人が街の文化に直接触れる滞在プログラムの拡充が、山口県柳井市 観光の新たな付加価値を生み出しています。