胸腔ドレーンの管理において、現場で誤った知識が受け継がれがちなのが「ミルキング(しごき)」の手技と「吸引圧設定」の扱いです。
排液の詰まりを解消するミルキング手順ですが、過度かつ強引なしごき操作はドレーンチューブ内に一時的な極度の高陰圧(-100〜-400cmH2O以上)を発生させます。この強力な陰圧が肺組織をチューブの側孔へ無理やり吸い込み、肺実質を損傷させたり、さらなる出血を誘発したりする事故が報告されています。現代の医療安全基準においては、徒手で激しく擦るのではなく、ローラー式のミルキング器を適切に使用するか、チューブを優しくポンピング(揉みほぐす)程度に留めるのがスタンダードです。
また、胸腔ドレナージの吸引圧設定(一般的には-5〜-20cmH2O程度)が適切にかかっているかも重要な観察項目です。低圧持続吸引器のウォーターレベルや設定ダイヤルが狂っていると、ドレナージ効率が落ちて呼吸性変動が不鮮明になることがあります。吸引圧をかけた状態では水柱が全体的に持ち上がった位置で小さく揺れるため、微小な変動を確認する際には、一時的に吸引をオフにして水封状態(重力ドレナージ)に戻して観察する技術も臨床では広く用いられています。