なぜサンボマスター「できっこないをやらなくちゃ」は今も涙を誘うのか

なぜサンボマスター「できっこないをやらなくちゃ」は今も涙を誘うのか

なぜサンボマスター「できっこないをやらなくちゃ」は今も涙を誘うのかを徹底追究! 読者が気になる 情報と解説を凝縮して配信します。

なぜこの曲は、大人になればなるほど、そして人生に疲れて立ち止まった時ほど涙を誘うのでしょうか。その泣ける理由を紐解く鍵は、冒頭から中盤にかけて展開される歌詞の意味の緻密な心理構造にあります。

曲の幕開けで山口は、こう歌い出します。

「どんなに打ちのめされたって 悲しみに心をまかせちゃだめだよ」
「君は今逃げたいっていうけど それが本音なのかい? 僕にはそうは思えないよ」

ここには、「弱音を吐くな」という威圧的な否定は一切存在しません。逃げ出したいほどの絶望に直面している相手の痛みを深く理解した上で、「でも、君の心の奥底にある本当の願いはそこじゃないはずだ」と、本人が諦めかけている心の火種を代わりに守ろうとします。さらに続く歌詞は、聴く者の心を激しく揺さぶります。

「何も実らなかったなんて 悲しい言葉だよ」

結果が出なかった挑戦を、世間は「失敗」や「無駄」と切り捨てがちです。しかしこの曲は、その過程で流した血と汗を絶対に無駄だとは言わせない。「結果が出なかったからといって、君の努力や存在そのものが否定されるわけじゃない」という、無条件の受容がここにあります。

そしてサビで爆発する「君なら出来ない事だって 出来るんだ本当さウソじゃないよ」というフレーズ。論理的に考えれば「できないことができる」というのは明らかな矛盾です。しかし、理屈を遥かに超えた山口の咆哮によって放たれるこの言葉は、心理学でいう「無条件の肯定的関心(Unconditional Positive Regard)」そのものとして機能します。何かが達成できたから評価するのではなく、生きているその存在そのものを肯定する。だからこそ、孤独に耐えてきた大人の張り詰めた緊張の糸がプツリと切れ、涙となって溢れ出すのです。

渡辺 美咲
著者

渡辺 美咲

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。