蕎麦通の間で長年繰り広げられてきた「十割か、二八か」という議論ですが、一般の利用者の間では依然として「十割蕎麦のほうが高級で上質」という誤解が根強く残っています。しかし、蕎麦の配合比率は味の上下ではなく、目指す「食味体験」の設計思想の違いに過ぎません。
一般社団法人日本麺類業団体連合会の公表資料や製粉業界の知見に基づくと、つなぎ(小麦粉)を一切使わない手打ち十割蕎麦の名店では、噛むほどに広がる蕎麦本来の力強い甘みと香りが最大の魅力です。一方で、小麦粉を2割混ぜることで生まれる二八蕎麦のおすすめポイントは、滑らかな麺肌がもたらす「ツルリとした喉越し(喉輪の快感)」と、温かい汁に浸しても千切れにくいしなやかなコシにあります。
ネット上の掲示板やSNSの声を集計・分析すると、「十割を頼んだがボソボソして口に合わなかった」という辛辣な感想が一定数見られます。これは、グルテンを含まない十割蕎麦を生粉打ち(きこうち)する高い職人技が伴っていないか、客側が「つゆをたっぷり浸けて噛まずに飲み込む」という二八向きの食べ方をしてしまっていることが主な原因です。