『ふたりのきもちのほんとのひみつ』の歌詞カードを開いてまず目を引くのは、徹底された「ひらがな表記」です。漢字を一切排除し、言葉の輪郭をあえて曖昧にすることで、聴き手によって多様な解釈が可能な多重構造を作り出しています。この作詞を手掛けたのが、「ミスター・スウェディッシュ・ポップ」として日本のポップス史に名を刻むシンガーソングライターのカジヒデキです。
カジヒデキ特有の短文をリズミカルに連打するリリック構成は、日常の何気ない情景を切り取りながら、どこか非現実的な浮遊感を醸し出します。本作において描かれているのは、どこまでいっても噛み合わない折部やすなとソーニャの日常そのものです。近づこうとしてはナイフを突きつけられ、拒絶されても再びまとわりつくやすなの無邪気さと、それを鬱陶しがりながらも完全に排除はしないソーニャの諦念が、計算された言葉の反復によってミニマル・ミュージックのように紡がれます。
タイトルの「ほんとのひみつ」というフレーズについて、作中や歌詞の中でその答えが直接明かされることはありません。しかし、関係者の証言や当時の制作インタビューを紐解くと、「秘密を共有しているのではなく、お互いに秘密を抱えたまま隣にいる状態そのものが二人の関係性である」という構造が浮かび上がってきます。渋谷系の洒脱な言葉遊びと、日常系不条理ギャグが見事に融合した奇跡的なリリックと言えます。