パーツクリーナーを住居内で害虫に向けて噴射する行為は、生命や財産に関わる複数の重大なリスクを孕んでいます。消防機関や製品安全データシート(SDS)が警告する主な危険性は以下の3点に集約されます。
第一の脅威は極めて高い引火性です。パーツクリーナーに使用される石油系炭化水素や噴射剤(LPG)は揮発性が高く、引火点は氷点下(マイナス20℃〜40℃以下)に達します。空気より重い可燃性ガスは部屋の床面や隙間に滞留しやすく、ゴキブリが潜みやすい冷蔵庫の裏(コンプレッサーの自動ON/OFF時に発生する微小火花)やキッチンのガスコンロ周辺で噴射した場合、見えないガス溜まりに引火して爆発事故を起こす危険性が極めて高くなります。衣服の擦れによる静電気の火花一つで着火した事例も報告されています。
第二の脅威は人体およびペットへの毒性です。高濃度の有機溶剤蒸気を吸入すると、急性中毒症状(めまい、吐き気、頭痛、意識障害)を引き起こします。特に体重が軽く床面近くで呼吸する犬や猫などのペット、乳幼児がいる家庭では、微量の吸入でも神経系に深刻な悪影響を及ぼす恐れがあります。
第三の脅威は住環境・家財への物理的損害です。強力な脱脂力は、フローリングの保護ワックスを一瞬で溶かし、白濁したシミを残します。また、プラスチック製品、家電の樹脂製ハウジング、壁紙の接着剤などを変質・融解させるため、賃貸物件では高額な原状回復費用を請求される要因となります。