耳から漂う悪臭にはいくつかの典型的なパターンが存在し、それぞれ発生源とメカニズムが明確に異なります。自身の耳がどのような臭気を放っているかを識別することが、的確な対処への第一歩です。
まず、最も相談件数が多いのが「耳垢からチーズや古い油のような臭いがする」というケースです。人の耳の中には、アポクリン汗腺の一種である「耳垢腺(じこうせん)」と皮脂腺が存在します。遺伝子解析の研究データによると、日本人のおよそ16%が「湿性耳垢(ベタベタした耳垢)」、約84%が「乾性耳垢(カサカサした耳垢)」を持っています。湿性耳垢の人はアポクリン腺の分泌活動が活発であり、分泌された脂質やタンパク質を皮膚の常在菌(ブドウ球菌など)が分解する過程で、イソ吉草酸などの脂肪酸が発生し、発酵したチーズや納豆に似た強い臭気を生み出します。
一方、ツンと鼻を突く酸っぱい臭いや薬品のような刺激臭がする場合は、耳内部の通気性が著しく悪化し、蒸れによって雑菌が異常繁殖している可能性が高まります。近年の取材現場でも、テレワークの定着やノイズキャンセリングイヤホンの常用によって外耳道が密閉され、外耳道内の湿度が短時間で90%以上に跳ね上がる「密閉多湿環境」が悪臭の温床となっている実態が報告されています。