誤解に塗れた全国的なイメージとは対照的に、発祥の地である愛媛県松山市では、野球拳に対する徹底した文化保護と継承活動が続けられています。1970年(昭和45年)には、テレビによる俗悪化に対抗する形で、松山市が「本家野球拳」を松山市指定無形民俗文化財に指定。初代家元・前田伍健の精神を後世に伝える組織が整備されました。
毎年8月に開催される松山最大の夏祭り「松山まつり」では、本家野球拳の精神を受け継ぐ「野球拳全国大会」が半世紀以上にわたり開催されています。出場者たちは揃いの法被やユニークな仮装、艶やかな浴衣に身を包み、脱衣など一切なく、純粋なリズム感とじゃんけん勝負、そして豊かな表情の表現力を競い合います。
松山市民や関係者の間では、メディアの暴走に対する複雑な思いと、郷土愛が交錯しています。地元関係者の証言やSNS上の声を検証すると、以下のような実態が浮かび上がります。
「子どもの頃から学校や地域行事で踊っていたので、県外に出て『野球拳って服を脱ぐやつでしょ?』と下品にいじられたときは本当にショックだった。松山の人間にとって、野球拳は正真正銘の誇りある伝統芸能です」(松山市出身・30代男性の投稿より)
現在では地元小学校の運動会や郷土学習の場でも取り入れられており、子どもたちにとっては「健全で楽しい郷土の踊り」として親しまれています。昭和の過激なテレビ番組を知らない若い世代が台頭したことにより、「脱衣のイメージ」から「純粋な伝統芸能」へと本来の認識を取り戻す動きが着実に実を結びつつあります。