日常会話で多用される「感受性」という語は、しばしば「共感性」や「情緒」と混同され、意味の輪郭が曖昧になっています。精神分析や臨床心理学において、これらの概念は明確に異なる階層に位置づけられています。
まず、感受性と共感性の違いに目を向けます。感受性が光や音、言葉のトーン、空間の空気感といった「あらゆる環境刺激全般を受け取る受容アンテナの感度」を指すのに対し、共感性(エンパシー)は「他者の感情状態を推し量り、自己の内面に同様の情動を再現する能力」を指します。すなわち、感受性はインプット全般の解像度であり、共感性はそのうちの対人情動に特化した派生機能にあたります。
さらに見逃せないのが、感受性と情緒の関連性です。受容した刺激が脳内の偏桃体や大脳辺縁系を揺さぶり、身体的・心理的な反応として立ち現れる状態が「情緒」です。感受性が鋭敏であるほど、脳内で情報処理されるデータ量が爆発的に増大するため、結果として情緒の揺れ幅(ダイナミクス)が大きくなります。感受性の高い人が感情的と見なされやすい背景には、受け止める情報量の圧倒的な多さという神経系の物理的現実が存在します。