「普通の塩焼きと同じ感覚でグリルに入れたら、わずか数分で炭化してしまった」という失敗談は、調理科学の観点から見れば極めて必然的な現象です。塩干しとみりん干しの決定的な違いは、表面を覆う糖分濃度の圧倒的な高さにあります。
みりんや砂糖に含まれるブドウ糖やりん酸、アミノ酸が高熱に晒されると、急激な「メイラード反応」と「カラメル化」が進行します。一般的な魚の塩焼きが香ばしい焼き色をつける温度帯(約160℃〜180℃)に対し、みりんダレの糖分は130℃を超えたあたりから急速に褐色化を始め、160℃を超えるとあっという間に炭化へと向かいます。さらに、さんま特有の豊富な不飽和脂肪酸が加熱によって身から染み出し、直火の熱源に触れることで瞬間的に引火・燃焼し、黒焦げを促進させてしまうのです。
つまり、塩焼きのように「強火の遠火で皮目をパリッと焼き上げる」アプローチは、みりん干しにおいては致命的なミスとなります。焦がさずに芯まで熱を通すためには、「表面の糖分を過熱させず、内部の脂をゆっくりと対流させる弱火制御」が不可欠です。