カエルが餌を認識する最大の鍵は「動体視力」にあります。カエルの眼は静止している物体を風景の一部として処理し、動く物体に対してのみ脳の捕食スイッチが入る特異な神経構造を持っています。このため、野生のカエルの捕食生態においては、目の前を横切る適切なサイズの動く生物すべてがターゲットになります。
身近な樹上棲種であるアマガエルが食べるものは、主に葉の上や空中を移動する小型の昆虫類です。ハエ、蚊、アブラムシ、小型のガ、クモなどを、粘着性の高い舌を瞬時に射出して捕らえます。体が小さく消化器官も繊細なため、硬い甲殻を持つ甲虫よりも、柔らかい飛翔昆虫を好む傾向があります。
一方、重量級の地表棲種であるヒキガエルが食べるものの範囲は格段に広がります。夜間に徘徊しながら、ミミズ、ダンゴムシ、ゴミムシ、大型のバッタはもちろん、時には口に入るサイズのヘビの幼体やネズミ、同種のカエルまでも丸呑みにします。顎の力が強く胃酸も強力なため、多少硬い殻を持つ昆虫でも難なく消化吸収できる強靭な消化器系を備えています。
南米原産のツノガエル類(クランウェルツノガエルやベルツノガエルなど)に至っては、「待ち伏せ型の頂点捕食者」として泥に潜り、通りかかった小型哺乳類や鳥類、トカゲなどを骨ごと噛み砕いて嚥下する驚異的な肉食性を見せます。カエルとは単なる「虫食い」ではなく、生態系のニッチに応じた高度な肉食ハンターなのです。