抗てんかん薬を選択するうえで最も基礎的かつ重大なステップが、「部分発作(焦点発作)」か「全般発作」かの厳密な診断です。この診断が曖昧なまま薬剤を選択すると、発作が抑制されないばかりか、かえって症状が悪化する危険性があります。
脳の一部から興奮が始まる部分発作に対しては、伝統的にカルバマゼピンが強力な効果を示してきましたが、近年は相互作用が少なく使いやすいレベチラセタムやラモトリギン、ラコサミドが単剤初期治療として広く処方されています。
一方で、発作開始時から脳全体が過剰興奮に巻き込まれる全般発作(特発性全般てんかんなど)では、第一選択薬としてバルプロ酸ナトリウムが長年君臨してきました。広範なスペクトラムを持つレベチラセタムやラモトリギンも有効な選択肢です。
ここで臨床上、特に警戒すべきは「薬剤誘発性の発作悪化」です。例えば、全般発作の一種である「欠神発作」や「ミオクロニー発作」に対して、部分発作の特効薬であるカルバマゼピンやフェニトインを誤って投与すると、Na⁺チャネル遮断作用によって発作頻度が激増することが実証されています。自己判断で他人の薬を飲んだり、発作型を精査せずに服薬を開始したりすることは絶対に避けるべき理由がここにあります。