「最新のデジタル式を買えばすべて解決する」――ネット上の口コミを鵜呑みにして導入した結果、数週間で使われなくなってしまう失敗事例が後を絶ちません。ここには、健常者の視点では気づきにくい重大な落とし穴が存在します。
典型的な失敗の筆頭が、「情報過多による視覚的混乱」です。多機能なデジタル時計の中には、日付や曜日だけでなく、西暦、六曜、室温、湿度、天気予報、さらにはアラーム時刻まで1画面にびっしりと詰め込んだモデルが存在します。健常者には便利に思えるこの情報量が、脳の処理能力が落ちたシニアにとっては「ノイズの海」と化します。文字が小さくなるばかりか、「画面のどこを見れば今日の日付なのか」が直感的に判別できなくなり、結果として時計そのものを見なくなってしまうのです。
もうひとつの盲点は、壁掛けお薬カレンダー1週間(服薬管理ウォールポケット)における設置ギャップです。「せっかく買ったのに、ポケットから薬を抜いて別の場所に隠してしまった」「月曜日の朝に木曜日の分を飲んでしまった」という相談は少なくありません。原因を調査すると、本人の目線より高すぎる位置に設置されていて奥の薬が見えていなかったり、ポケットの口が狭くて麻痺のある指先で取り出せず、引っ張ってポケットごと破いてしまったりする物理的摩擦が引き金になっています。機能の優秀さと、本人の身体特性への適合は全く別の問題なのです。