インターネット上の掲示板やSNSでは「片耳装着なら片方の耳が空いているから合法」「骨伝導イヤホンは耳を塞がないから警察も文句を言えない」という書き込みが後を絶ちません。しかし、法的な実態と各都道府県警察の見解は全く異なります。
片耳イヤホンの違法性を判断する上で重要なのは、東京都道路交通規則第8条第5号をはじめとする各都道府県の規定です。多くの自治体では以下のように定めています。
「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホン等を使用して安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと。」
条文の主眼は「イヤホンを両耳に着けているか否か」ではなく、「安全な運転に必要な音が聞こえているか」という実質的状態に置かれています。人間は両耳の時間差・強度差を利用して音の方向を認識する「音源定位」を行っています。片耳が塞がれるだけでも、後方から接近する自動車のエンジン音やクラクションの方向を正確に察知する能力は著しく損なわれます。
また、骨伝導イヤホン違反の真相についても同様です。骨伝導デバイスは耳の穴を塞ぎませんが、音量を上げれば内耳(蝸牛)に対して直接強力な音響信号が伝達されます。脳の聴覚野が再生中の音声にリソースを奪われる「カクテルパーティー効果の逆現象(認知的マスキング)」が発生し、外界の環境音が耳から入っていても脳が認識できない状態に陥ります。外見上もイヤホンを装着しているように見えるため、警察官から停止を求められる確率は極めて高くなります。
さらに、ネックスピーカーの合法性についても、物理的に耳を塞がない点では有利ですが、周囲の交通音が聞こえないほどの音量を出していれば、法的な違反状態であることに変わりはありません。「機器の形状」ではなく「外界の音が正常に聞こえているか」が唯一の判断軸です。