吹上庵を語る上で絶対に外せないのが、卓上に置かれた「つぼ漬けの大根」だ。注文した料理が運ばれてくるまでの間、客は小皿に大根の漬物を盛り、お茶をすすりながら待つ。この何気ない時間が、実は極上のプロローグとなっている。
パリパリとした心地よい歯ごたえと絶妙な塩梅。ついつい箸が伸び、気づけば料理が届く前に満足感すら覚えてしまう。そして満を持して登場するのが、木製の大きな板に盛られた名物「板そば」だ。しなやかで喉ごしの良い麺を、鹿児島ならではのほんのり甘みを含んだ濃口のつゆにくぐらせる。一口啜れば、口いっぱいに広がる香ばしさと旨味の層。この伝統の組み合わせこそ、長年ファンを虜にしてやまない黄金律である。