フィリピンの台風被害を語る上で風化させてはならないのが、2013年11月にレイテ島タクロバンを中心に壊滅的打撃を与えた台風30号(国際名:ハイエン/現地名:ヨランダ)です。中心気圧895hPa、最大瞬間風速90m/sという観測史上類を見ない猛威で上陸し、津波に匹敵する高さ5メートル以上の高潮が発生。公式集計だけでも死者・行方不明者7,300人以上、被災者数は1,600万人を超える未曾有の大惨事となりました。
当時の生存者の手記には、「波が壁のように押し寄せ、頑丈と信じられていた避難所のRC造施設すら一瞬で水没した」「暴風の唸り声で人の叫び声すら掻き消された」という凄惨な証言が残されています。この教訓を経て、フィリピン政府は警報システム「シグナル1〜5」の運用を厳格化し、高潮(Storm Surge)ハザードマップの整備を進めました。
しかし近年でも、2021年の台風22号(ライ/現地名:オデット)がセブ島やシアルガオ島を直撃し、400名以上の尊い命が失われるとともに、インフラ復旧に数ヶ月を要するなど、巨大台風の破壊力は依然として地域の平穏を脅かし続けています。