目覚めた直後にレンズが吸着している場合、角膜表面を覆う涙液層が枯渇し、レンズと角膜が真空パックのように密着しています。ここで焦って乾いた指先や爪を立ててつまみ出そうとすると、角膜表面の細胞層(角膜上皮)ごと剥ぎ取ってしまう角膜上皮剥離を引き起こします。激痛とともに細菌感染の窓口を開くことになるため、直接剥がす行為は絶対に避けてください。
レンズを安全に外すための基本原則は「まず水分を補給してレンズの可動性を取り戻すこと」です。以下のステップに沿って、段階的にアプローチを行ってください。
ステップ1:防腐剤無添加の人工涙液を十分に点眼する
まずはコンタクト装用時専用の点眼薬、または防腐剤(ベンザルコニウム塩化物など)を含まない人工涙液を目全体に行き渡るよう2〜3滴点眼します。点眼後はまぶたを閉じ、眼球をゆっくり上下左右に動かしてレンズの裏側に水分が浸透するのを1〜2分程度待ちます。
ステップ2:まぶたの上から優しくマッサージし、まばたきを繰り返す
目を閉じた状態のまま、指の腹で上まぶたの上からレンズの縁を軽く触れる程度に優しく押し、角膜との間にわずかな隙間を作ります。その後、意識して深いまばたきを数回繰り返すと、涙がレンズの下に回り込み、ふっとレンズが浮き上がる感覚が得られます。
ステップ3:洗面器の水中でまばたきをする(どうしても外れない場合の奥の手)
点眼を繰り返しても密着が解消されない場合、清潔な洗面器にぬるま湯または精製水を張り、顔を浸けて水中でパチパチとまばたきを試みる手法が有効です。浸透圧の作用と水流によってレンズが自然に目から離れやすくなります。ただし、水道水中のアカントアメーバ混入を防ぐため、レンズが外れた後は速やかに眼周囲の水分を拭き取り、目を擦らないよう注意してください。
特にカラーコンタクトレンズ(カラコン)を装着したまま就寝してしまった場合は、一般的なクリアレンズよりも酸素透過性が著しく低く、色素の印刷構造によってレンズ自体の厚みと硬さが増しているため、吸着の強度が上がっています。爪を立てての除去は失明につながる外傷リスクを跳ね上げるため、焦燥感を抑え、十分に潤いを与えて自重で動くまで待つ慎重さが求められます。