「ナイフを入れたのに、中からクリームが溢れてこない」「食感が固くてモッツァレラと大差なかった」――ネットのクチコミや料理相談サイトで頻繁に見受けられるこうした不満の原因は、チーズ自体の品質ではなく、食べる直前の「温度」にあります。
ブッラータの内部を満たしているのは、「ストラッチャテッラ」と呼ばれる、繊維状に細かく裂いたモッツァレラと新鮮な生クリームを和えたものです。生クリームに含まれる乳脂肪分は、約10℃以下では固形化し、約28℃〜36℃で液体へと融解するという明確な物理的特性を持っています。冷蔵庫(約3〜6℃)から取り出した直後のブッラータは、内部の乳脂肪が冷え固まってバターのように凝固しているため、ナイフを入れてもとろりと流れ出ることができません。
イタリア現地のトラットリアやチーズ工房で「ブッラータは室温で食すべし」と叩き込まれるのは、単なる慣習ではなく科学的な裏付けがあるからです。常温(20〜25℃前後)に30分〜1時間ほど置いておくことで、中心部のクリームがゆるみ、口に含んだ瞬間にミルクの豊かな香りと甘みが舌全体へ一気に広がります。特に冬場は室温が低いため、食べる1時間前、夏場であれば冷房の効いた部屋で30分前を目安に冷蔵庫から出しておくのが、失敗を避ける絶対条件です。