清春芸術村が旅行者や建築ファンのあいだで特別な目的地として語り継がれる最大の理由は、「孤高の名建築群」と「悠久の自然環境」が完璧な均衡を保っている点にあります。1983年の開村以来、ここは単に作品を陳列して見せるだけの箱モノではなく、芸術家が集い、思索を深める「コロニー(共同体)」としての血脈を宿し続けてきました。
シンボルとして鎮座する十六角形の円形校舎「ラ・リューシュ」は、かつてパリのモンパルナスでシャガールやモディリアーニらが集い、青春の熱気に満ちていた伝説の集合アトリエ(ギュスターヴ・エッフェル設計)を忠実に再現したものです。エッフェル塔のエレベーター階段の一部が移築された庭園を歩くと、19世紀末の巴里と甲斐の山並みが交差する不思議な感覚に包まれます。
さらに見逃せないのが、春の訪れとともに訪れる圧倒的な絶景です。かつての清春小学校の校庭跡地には、1925年(大正14年)に子どもたちの手によって植えられた樹齢100年を超える約30本のソメイヨシノが今なお力強く枝を広げており、山梨県の指定天然記念物にも登録されています。歴史ある古木の花びらがコンクリートのモダンな建築美に舞い散る光景は、日本国内のあらゆるミュージアムを探しても他に類を見ません。