多くの栽培者を悩ませる「種芋を切るか、切らないか」という選択。現場の栽培試験データおよび農業指導指針が示す結論は極めて明快です。判断基準となるのは「種芋の重量」と「栽培する季節(春か秋か)」の2点に集約されます。
まず春栽培において、購入した種芋が1個あたり60〜80g以上の大玉・中玉サイズであれば、2〜3分割に切り分けるのが定石です。種芋を切る最大の目的は、芽の数を適正にコントロールして1株あたりの着生イモ数を最適化し、過密による小玉化を防ぐことにあります。また、種芋1個から複数株を育てられるため、種芋代のコストパフォーマンスを高める経済的メリットも見逃せません。
一方で、30〜50g程度の小ぶりな種芋(鶏卵サイズ)であれば、一切包丁を入れず「そのまま植え付ける」のが最も安全です。無理に小さく切り刻んでしまうと、発芽初期に必要な養分や水分が不足し、芽の勢いが著しく低下します。
さらに決定的な違いが生じるのが「春じゃがいも」と「秋じゃがいも」の季節差です。秋植えの時期である8月下旬〜9月上旬は、地温が30℃を超える猛暑環境にあります。切断によって露出した生傷から土中の軟腐病菌やフザリウム菌が侵入し、植え付け後わずか数日で種芋がドロドロに腐敗する事故が頻発します。そのため、秋栽培においてはサイズを問わず「切らずにそのまま植える」ことが鉄則です。