キャスト陣が作品に注いだ熱量は、生半可なものではありませんでした。主演の綾野剛さん、坂口健太郎さん、大森南朋さん、松岡茉優さんらは、クランクイン前に神奈川県立こども医療センターの新生児科・NICUを極秘裏に訪問し、長時間の現場見学と手技指導を受けています。
豊島医師が当時発信していた公式ブログ『がんばれ!!小さき生命(いのち)たちよ』や関係者の述懐によると、綾野剛さんはNICUの保育器の中にいる体重500gにも満たない赤ちゃんと対面した際、言葉を失い、静かに涙を浮かべていたといいます。綾野さんはただ立ち尽くすのではなく、「赤ちゃんに触れる前に手のひらを十分に温めること」「触れる際は躊躇せず、しかし羽毛のように包み込むこと」など、現場の看護師や医師が日常的に行っている微細な所作を貪欲に吸収していきました。
特に新生児科医の苦悩を演じた坂口健太郎さんに対しては、豊島医師から「白川という医師が、自らの未熟さと過信から赤ちゃんの異変を見落としかけるエピソード」において、厳しい現場の倫理観が直接叩き込まれました。実際の医療現場では、わずか1ミリグラムの薬剤投与の遅れ、1パーセントの酸素濃度のブレが赤ちゃんの生涯を左右します。「ドラマだから」という妥協を一切排除し、俳優陣を本物の医療従事者の精神状態へ引き上げた場所こそが、神奈川県立こども医療センターだったのです。